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昨年読んだおもしろい本(上半期)

2012/01/26
今回は昨年読んだおもしろい本を紹介したいと思います。
普段から読んだ本はすべて点数をつけて記録しています。
0.5点刻みで、5点台は普通に読めた本、6点台はおもしろく読めた本、7点台はなかなか読めない傑作、8点台はつけたことあるかな...そんな感じで点数をつけています。
今回は昨年読んだ6点以上の本を紹介していきます。

警官の血/佐々木譲 7.5点
ある三代の警官を時代の変換とともに描いた物語。
物語はもちろんおもしろいが、時代の描写も見事です。
確か3夜連続でスペシャルドラマが放映されました。
DVDなどになっているのかは知りませんが、内容は非常によくできていました。

新世界より/貴志祐介 7.5点
大好きな作家の一人。
もともと寡作で有名でしたが、最近は意欲的に作品を発表しています。
ジャンルはSFで、現代とはまったく違う世界が描かれているのですが、細部まで丁寧に描かれていて、違和感がないどころか、その世界観にどっぷり浸かることができます。
分量は多いですが、長さをまったく感じませんでした。
100年後の日本、サイコキネシスを手に入れた子どもたち、隠された先史時代の秘密と魅力的なガジェットでいっぱいです。

造花の蜜/連城三紀彦 6.5点
とにかく構成が秀逸。
最初はただの誘拐事件のように思えるのですが、読み進めていくと事件の様相が二転三転していきます。
読者を騙すために全力を尽くした作品だと思います。
僕はもちろん見事に騙されました。

さよならドビュッシー/中山七里 6点
デビュー作でこんな話が書けるなんて、その才能がうらやましいです...
作中のクラシックの表現は良かったです。
タイトルも意味深。

星を継ぐもの/J.P.ホーガン 7点
SF史に輝く名作です。
SFは最近読むようになったので、やっと出会えたという感じです。
もちろん傑作なのは言うまでもないです。
構成も上手で、特に最後の展開はすごく感動的でした。
ジャンルの好みを問わず、万人に薦めたい作品です。

ガニメデの優しい巨人・巨人たちの星/J.P.ホーガン ともに6点
星を継ぐものに連なる三部作です。
星を継ぐものがかなり衝撃的だったので、少し点は落ちますが十分おもしろい作品です。
異星人のガニメデの造形が良いし、人類の飛躍を予感させる最後がきれいにまとまっていて良かったです。

水魑の如き沈むもの/三津田信三 6.5点
この人も大好きな作家です。
特にこの刀城言耶シリーズは大好きでずっと読んでいるシリーズです。
今作もいつも通り、田舎で殺人事件が起きて村人は何かを隠しているようだ...的な展開ですw
一昔前の田舎+民俗学っぽい話+ミステリは最高の組み合わせですね!
ええ、もちろん京極堂シリーズも大好物です。

君がいなくても平気/石持浅海 6.5点
独創的なアイデアでどんどん作品を発表していく作家です。
自分が所属する会社のチームで殺人事件が発生して、どうやら犯人は自分の彼女のようだ...
というあらすじを読んだときはそれほど魅力を感じなかったんですが、読むうちに段々引き込まれていきました。
読み終えたあとだと、このタイトルが非常に良いものに感じます。

夏への扉/ロバート.A.ハインライン 6点
これも有名なSFの名作ですね。
内容自体はオーソドックスなタイムトラベルものですが、ほろ苦さも、未来への希望も詰まっている作品です。
最後はちょっと都合がいいかなと思うけど爽快!

アルバトロスは羽ばたかない/七河迦南 7点
主人公が勤務する児童養護施設で起こる不思議な事件の連作短編集です。
連作短編集は何か仕掛けがあることは多いんですが今作も...
久しぶりに完全に騙されたって感じでした!
不自然なのは分かっていたんですけどねーここじゃ詳しく話せないのが残念ですw
ちなみにゴルフ用語としても有名なアルバトロスって、アホウドリのことらしいです。

電気人間の虞/詠坂雄二 7点
怪作ばかり発表している詠坂雄二の作品のなかでも特に奇想天外な作品。
電気人間にまつわる都市伝説と、それに関連して次々と起こる殺人事件。
どう考えても不可能と思われる事件の唯一の解はこれしかない!
僕はこういう話がすごく好きなんですが、人によっては本ぶん投げてもおかしくないなあと思います。
複線自体は綿密に張ってあって、ヒントもある程度あるのでアンフェアではないはず...
この話が好きだと思える人とは仲良くなれそうだw

おやすみラフマニノフ/中山七里 6点
作中での音楽の使い方や、キャラクターの造りが丁寧で質が良いです。
文章もきれいなのでストレスなくどんどん読み進めることができると思います。
音大に通うのって大変だなあ...

迷宮のファンダンゴ/海野青 6点
正統派のハードボイルドで、きちんと筋が通っています。
文章もきれい読みやすく、これからも読んでいきたいシリーズです。

Rのつく月には気をつけよう/石持浅海 6点
料理の描写が上手で、読んでいるとお腹が空いてきます。
やや強引なところもありますが、最終的にはびっくりしちゃうと思います。
これぞ連作短編集って感じです。

ボディ・メッセージ/安萬純一 6点
本格への愛でいっぱいな作品。
展開や謎の提示が絶妙で、ぐんぐん物語に引き込まれます。
この作品以降名前を聞かないのは何でだろう...

模倣犯/宮部みゆき 6.5点
中居正広主演で映画にもなっているので、知っている人も多いと思います。
宮部みゆき渾身の作品で、見事な構成力です。
ちょっと量が多すぎる気もしますが、最後までおもしろく読めました。
映画も改めて観たいんですが、近所にないんですよね。

治療島/セバスチャン・フィツェック 6点
俗っぽいところもありますが、自分の好きなタイプの仕掛けがしてあって楽しく読めました。
妄想と現実の境目がどんどんあやふやに...
これがデビュー作なのですが、次の作品はいまいちでした。

悪魔はすぐそこに/D.M.ディヴァイン 6.5点
かなり大胆にトリックが仕掛けてあります。
一昔前の作家なのですが、ちょっとしたブームなのか最近どんどん翻訳されていっています。
舞台設定などはワンパターンなところもありますが、トリックがよくできているのでおもしろく読めます。

仮想儀礼/篠田節子 6.5点
新興宗教の教祖とその信者たちの話。
まずお金儲けのために宗教を興すところから話が始まるという設定がおもしろいです。
宗教の人を引き付ける魅力や、引き付けられる人々、ある種の胡散臭さが見事に描かれています。
迫力を感じる作品でした。

七つの海を照らす星/七河迦南 6.5点
七河迦南の短編集には何か仕掛けがあるはず...
と思っていても騙されるw
順番的にはアルバトロスよりこっちが先です。
周到に複線が張り巡らされていて、しかもそれが最後にきれいに収束していきます。
見事としか言えない!

Another/綾辻行人 6.5点
綾辻行人らしい、怪異とミステリの融合した話。
ちょうどアニメ化されていて旬な作品ですが、真相を知っているとうまく映像化できるのかなと思ってしまいます。
これ以上は突っ込んだ話ができませんが...

姉飼/遠藤徹 6点
簡単に言うと姉を飼う話です。
まあここでの姉ってのは現実世界の姉とは全然違った創作物なんですよ。
この作中の姉が何ともいえないんですよね...
どこかずれた異質さがジワジワとくる作品です。

卵をめぐる祖父の戦争/デイヴィッド・ベニオフ 6点
自分の祖父から聞いた戦時中の話を文章にした、という体のフィクションです。
簡単に言うと、ヒラの兵隊が戦地に放り出されて何とか生き抜くって話なんですが、言葉じゃ説明できない味わい深さがあります。
決して派手じゃありませんが、じんわりと染み入ってくる話です。

クリスマスに少女は還る/キャロル・オコンネル 6.5点
これは本当によくできた話でした。
厳密にいうとミステリじゃないのかなって感じもしますが、複線の張り方がうまいし、物語は最後の展開がすばらしいです。
人を選ばない話だと思うので、ぜひ読んで欲しい作品です。

6点以上ってのはちょっとミスったかな...
ゲームブログなのに上半期だけでこんな長さになってしまいました。
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2010年上半期ミステリ大賞

2010/07/18
上半期が終了したということで、ゲーム以外では小説を取り上げてみたいと思います。
今までブログ上で触れることはありませんでしたが、たまに小説を読んだりもします。
といっても高尚な純文学や、難しい本を読むような頭はないのでもっぱらミステリばかり。
そして一応読書ノートみたいなものを作って、寸評と採点がすべてメモしてあります。
10点満点中7点以上の作品は僕の中ではかなりの好評価なので、上半期に読んだ73作品の中から7点以上をとった6作品を紹介しようと思います。

7点
生ける屍の死/山口雅也
ミステリ界の金字塔ともいえる作品で、いまさらここで紹介するまでもない作品です。
死者が蘇るということを前提とした世界で、その設定を存分に活かしたトリックは見ごたえ充分。
山口雅也は好きな作家で、『奇偶』も非常に好きな作品です。

女王国の城/有栖川有栖
学生アリスシリーズ待望の新作。
不可思議な宗教団体、その宗教団体によって作られる山奥のクローズド・サークルとミステリ好きにはたまらない舞台設定。
その宗教の設定も秀逸で、だからこそのトリックなどミステリとしての完成度がすばらしいです。
現時点での有栖川有栖の集大成といってもいいでしょう。

名残り火/藤原伊織
僕が一番好きな作家です。
残念ながら59歳という若さで亡くなってしまったので、これが最後の作品です。
この人の書く作品は本当に力があります。
非常にシンプルな文体ながら行間からは様々な言葉が滲み出ています。
信念を持ったキャラクター達は非常に魅力的です。
これほどきれいな文章を書く人を他に知りません。
もう新しい作品を読めないことが残念でなりません。
ちなみにこの作品は『てのひらの闇』という作品の続編的な意味合いがあるので、できれば続けて読むのがいいでしょう。

7.5点
ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎
今乗りに乗ってる作家の一人ですね、今作は年初に映画化もされています。
本作でも井坂らしいシンプルながらもシャレた言い回しは健在。
よくある逃亡者をテーマとした作品ですが、疾走感と巧みな構成、味のあるキャラクター性としっかりと個性が出ています。
展開に難がある部分もありますが、それを補って余りあるエンターテイメント性があります。

8点
赤朽葉家の伝説/桜庭一樹
今年読んだ中でも一番の傑作。
何よりも読ませる力がすばらしい。
昭和と平成を生きた赤朽葉家の女たちの姿が強い筆力で描かれています。
謎解きの要素もありますが、特にミステリ色が強い訳ではないので、どのジャンルを読む方にもお勧めです。

首無の如き祟るもの/三津田信三
舞台設定、トリック、複線、そして形式、全てが高水準。
非常にまとまりがあってとても気持ちよく読めました。
横溝ミステリの後継者的存在として、今最も乗っている作家の一人です。
個人的にはこういう昭和の山村的ミステリは最高に好みです。
ちなみにこの作家の書くホラー小説は本当に怖いです。

あーやっぱり本の感想を書くのは、ほんの数行でも難しいです。
自分に文章力があればもう少しきちんと伝えれるのになあ...
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「グラスホッパー」の解釈

2010/04/19
数年前に買ったグラスホッパーを再読。
というのも初見では気づけないネタが仕込まれているという話を耳にしたからです。
伊坂幸太郎の小説は読みやすいので、とりあえずさくさく読んでみました。

ストーリーを簡単に説明すると、まずこれは伊坂お得意の数人の視点から物語を紡ぐ形式の小説です。
鈴木 妻を殺された復讐のために、復讐相手のいる非合法な組織に社員として潜入
鯨  相手を自殺させる能力をもつ殺し屋
蝉  ナイフを使う殺し屋

この三人の視点で物語は進んでいます。
序盤に鈴木の復讐相手である寺原(長男)が目の前で殺されます。
殺したのはどうやら「押し屋」と呼ばれる殺し屋で、鈴木はその殺し屋を追うことを命じられ、「押し屋」槿の家に家庭教師として潜入します。
鯨と蝉もそれぞれの思惑で「押し屋」を追う事になり、三人の物語は徐々に絡み合いながら収束していくって感じの話です。

こういった形式は伊坂お得意の手法ですし、残酷な描写や救いようのないこと(結局鈴木の妻が殺されているのはどうしようもない)も伊坂らしくさらっと書いてあります。

なぜわざわざ記事にしたかというと、読後の自分の解釈がネットで色々見たのとちょっと違っていたから。

以下ネタバレです。


















この小説における一番の謎はやはり最後の部分でしょう。

 列車が通り抜けていくのを、鈴木はじっと眺めながら、「それにしてもこの列車、長くないか」と、亡き妻に向かってこっそりと言う。
 回送電車は、まだ通過している。(P335)

この妙に思わせぶりで不可解な部分です。
列車の通過の長さに関して、物語中盤に鯨の幻覚という形で、唐突に重要な示唆がなされています。

 「兆候はあるんですよ、幻覚のしるしは。例えば、街で立っている時に、目の前の信号の点滅がちっとも止まらなかったり、歩いても歩いても階段が終わらなかったり。駅にいる時も、通過する列車がいつまで経っても通り過ぎない、とか、この列車ずいぶん長いなあ、なんて思ったら、まずい兆候ですよ。そういうのは全部、幻覚の証拠です。信号や列車は、幻覚のきっかけになりやすいんです。信号はたいがい見始めの契機で、列車は目覚めの合図だったりします」(P165)

かなり具体的に言及されており、また信号や列車など対応する場面も作品内で描かれているので、この部分は作者からのヒントと考えてもいいと思います。

ネット上で見られた意見では、最後の場面が幻覚のきっかけになっている、というものや、妻の死をきっかけに幻覚を見るようになり、この小説自体がすべて鈴木の幻覚だったというものがありました。

しかしP165の記述を見る限り、列車はあくまでも目覚めの合図です。
そうすると幻覚を見始める契機は信号の点滅が止まらないことと考えるのが妥当です。
本書の中で信号の点滅に言及している場面が一箇所だけあります。

 茫然とした気分で、フロントガラスを眺めた。交差点の歩行者用信号の青色が、点滅をはじめる。その点滅がゆっくりに見える。いくら待っても赤にならない。
 この信号いつまでゆっくり点滅しているんだよ。(P22)

なんと物語の導入部ともいえる場所で信号が点滅を続けています。
まだ鈴木の復讐相手である寺原(長男)は死んでいません。
この場面は寺原の組織の比与子という女性に、鈴木が復讐のために潜入しているのではないかと疑われている場面です。
そして比与子から、拉致した若者を殺すことで疑いを晴らすよう迫られている中で信号の点滅が始まります。
要するに元々は善良な一市民である鈴木は、したくもない殺人を迫られ進退窮まっているわけです。
現実逃避にはもってこいの場面でしょう。
さらに物語の終盤で、ここで殺すよう迫られた若者が実は殺し屋で、組織の社長である寺原を暗殺して逃げた、という何とも都合のいい展開まであります。


幻覚の始まりと終わりは分かりました。
では物語の中で鈴木の幻覚である部分はどこなのでしょうか。

作品内で鯨が見る幻覚は、自分が自殺させた人々です。
現実の生活の中で突如その人々が現れ、鯨に話しかけてきます。
そしてその間は現実世界に対する認識は非常に弱まります。
ただしあくまでも自分のいる場所に幻覚が現れるだけです。

もし鈴木もそうだと考えた場合、説明がつかないことが多々あります。
鯨の見る幻覚は現実に干渉してきますが、その場面で行動を起こし場面を展開していくのはあくまで鯨自身です。
しかし鈴木の場合は到底自分の力ではどうしようもない状況です。

幻覚に関して、言及している場面がもう一箇所あります。

 「そのうち幻覚に人生そのものを呑まれてしまいます。気をつけないと。どちらが現実か分からなくなって」(P165)

鈴木は信号の点滅の場面以前がほとんど描かれていません。
この時点で幻覚の症状が鯨と比べてかなり悪化していた可能性もあるわけです。
そうすると信号の点滅以降すべてが幻覚と考えることもでき、むしろその方が納得できるような気がします。
要するに人生そのものを呑みこまれているわけです。

以上のことから、殺しを迫られた鈴木は幻覚を見始め、それが物語として描かれたと考えます。
よって列車によって幻覚から目覚めた鈴木の横には、殺しを迫る比与子がいるのではないでしょうか。

救いのない結末ですが、伊坂幸太郎はこういうことをしてもおかしくないと個人的には思います。

引用部は全て
伊坂幸太郎 『グラスホッパー』 角川書店
より引用しました
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[映画] ブラインドネス鑑賞

2010/04/03
ブラインドネス鑑賞しました。
この映画非常に重かった...見るのにはかなりエネルギーが必要です。
日本から伊勢谷友介と木村佳乃が出演したことでも話題になりました。

以下ネタベレを含みます。

ストーリーは一人の男(伊勢谷友介)が失明するところから始まります。
医者も原因が分からずとまどっている中、診断した医者を始めその男に接触した者たちが次々に失明していきます。
失明は原因も分からぬまま感染性のものであることだけが明らかになり、国中で感染が広まっていき感染者は隔離されます。

隔離された場所はもともと精神病院だった場所で、劣悪な環境です。
外では軍が監視していて少しでも外に出ようとすれば問答無用で射殺されます。
最初に男を診断した医者の妻は、なぜか感染しないのですが夫を思い失明したと偽って夫ともに隔離場所に向かいます。

徐々に感染者たちが集められるにつれ部屋ごとにコミュニティができ、その間で対立も生じます。
医者を中心にあくまで民主主義的な方針をとる第一部屋に対し、第三部屋は王を自称する男が現れ、銃を背景に食料の独り占めを始め圧制を開始します。
王たちは最初食料と引き換えに金品を差し出させますが、それが尽きると今度は女を差し出すことを望みます(ここら辺は見ていて本当にしんどいです)。

そんな中ついに第一部屋の住人たちも反旗を翻すことを決意して、第三部屋の住人たちがいる場所に向かいますが、そこで火事が起こり(見ていて火事の原因がよく分からなかったです)第三部屋の住人たちはあっけなく死んでしまいます。

住人たちは外で見張っているはずの軍に助けを求めますがなぜか反応がありません。
そこで外への扉を開いてみるとあっさりと外へ出られます。
唯一目が見える医者の妻をたよりに自分たちの住んでいた街に向かいます。

街は荒廃しており人々は皆失明していました。
そこで何とか食料を集めたところで雨が降ってきて、人々は笑顔で雨に打たれ体を洗い流します。
医者の妻たち一行は医者の家へ向かい、そこで一緒に暮らすことを決めます。
皆心の繋がりを持ちそれなりの平穏を得たところで、最初に発症した男が急に視力を取り戻し、皆自分も視力を取り戻せる希望を持ち、医者の妻は次は自分の番だと空を見上げる場面で物語は終わります。

以下考察。

皆が視力を失ったとき世界の様相は一変します。
見てくれを気にしなくなり全裸で生活する人もいるくらいです(医者の妻が失明していないということは極一部の人しか知りません)。
そんな世界では逆に一人目が見えることは少数派であり、一体感を一人だけもてません。
そしてもうひとつの逆説として、この施設には元々盲人だった老人が一人紛れ込んでいて、彼は目が見えないことに慣れているので皆が急に失明した世界では権力者となります。
人間の今ある強さや弱さなど脆いものである、という示唆に思えます。

さらにこの映画では目が見えなくなったときの人間の弱さが描かれているように思えますが、それはちょっと違うんじゃないかなと思います。
目が見えなくなったことで起こる出来事は皆僕たちの日常でも十分起こりうる出来事じゃないかと思います。
つまり元々ある欲に過ぎないと思うのです。
目が見える見えないに関係なく、人間は弱いものであるという事実を描いたんじゃないでしょうか。

ただそれだけではなく、目が見えないことで本当の絆を得る人々もいます。
そこに外見や地位、歳や人種は関係ありません。
その傍証として、最後に医者の家に集い真の絆を得る人々は人種も歳もばらばらです。
そしてこの作品では登場人物には一切名前がありません。

もうひとつ作中で重要なのは雨のシーンだと思います。
最後ら辺で皆が雨に打たれる場面は一見しただけでは全く意味が分かりませんでしたが、かなり重要なシーンだということは推測できました。
その直前に「パウロの回心」の話が描かれていたことと合わせて考えると、やはりキリスト教をモチーフにして考えるべきだと思います。
キリスト教の知識がここでもまた必要か!と思わされましたが、だとすると失明の原因は神の仕業だったと考えるべきでしょう。
神は人間が目に頼り、物事や人の本質を見ることのなくなった人類に対する一種の戒めだったのではないでしょうか。
そして最初に失明した男が視力を取り戻すのは、目に頼ることなく本当の絆を得ることで神の赦しを得たのではないでしょうか。
ただ作中で「パウロの回心」の場面で、神の罰ではないと言われていたのでちょっと微妙な解釈ですが。
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たまには映画の話なんかも

2010/03/19
久しぶりの更新です。

新しいゲームをがっつりやる時間がないので(新作買うと他のことが疎かになっちゃいます)、かなりストレス溜まっています。
そのストレス解消法が、ゲームアーカイブスのゲームと映画鑑賞。
いやいやその時間でゲームやればいいじゃんって感じですが、映画の二時間区切りといつまでも際限なくできるゲームとでは自分の中でけっこう違うんですよ。
ゲームアーカイブスはちょこちょこFFTをやっています。
今プレイしてもすごくクオリティの高い作品です。

mk2で最近のゲームを見ていると意外にも(と言っては失礼ですが)「エンドオブエタニティ」がかなりの高評価。
人を選ぶっぽいのは事前の情報である程度分かっていたので上手く住み分けが出来たんだとは思いますが、それにしてもすごく評価されています。
フレの評価も上々なのでいつかはプレイしたいです。

次に一本買うとしたら「ヘビーレイン」。
フリーズの問題等はあるみたいですが、これもすごく評判がいいです。
なかでも目立つのは没入感と、斬新さをほめる声です。
やっぱりミステリ好きとしてはぜひやっておきたい作品です。

これから発売の作品で気になるのは「ゴッドオブウォー3」と「北斗無双」と「龍が如く4」。
「GOW3」はゲーム史上最高と言えるくらいの評価をされていますね。
実はシリーズを通してまったくの未プレイなのでぜひセット版を買って一気にプレイしたいところです。
「北斗無双」は今のところ見送る予定。
どうも声優や音楽が総とっかえらしいのと、グラフィックがしょぼいっぽい点、爽快感がなさそうな点が気になります。
近くのTSUTAYAでは常に「愛をとりもどせ」を流して宣伝していますが、それゲームで流れないんちゃうのとか思ってしまいますw
「龍が如く4」はまずは3をプレイしてからになります。
3もずっと買おうとは思ってるんですが、BEST版が出ていていつまで経っても値段が下がらないので躊躇しています。
1と2はボス倒すのをちょっと手伝ったくらいですが、プレイするのを後ろから眺めてたりしたんでそれなりにストーリーは分かっている...はず。。

最近観た映画では、「隠された記憶」と「ミスト」が印象に残りました。
「隠された記憶」はちょっと文章で説明するのには難解過ぎるので、「ミスト」の方を簡単に紹介します。

「ミスト」はスティーブン・キング原作のパニック・ムービーです。

簡潔にストーリーをまとめると、ある田舎町が霧につつまれ息子とスーパー・マーケットに来ていた主人公はそこに閉じ込められます。
霧の中には何か怪物がいるようだが、ほとんどの人は最初それを信じてはくれない。
犠牲者が出始めることで皆信じるようにはなるが、旧約聖書を妄信するおばさんが徐々に人々を扇動するようになり、見知った顔だった住人たちの間がギスギスしてくる。
依然として霧の正体は不明だし、かといってそのまま篭城していても打つ手はない、主人公の選択や如何に!
といった感じの映画です(ストーリまとめるの難しいっす^^;)。

まず思ったことは、この映画って本当のところはキリスト教をある程度知っていないと理解できないんだろうなということです。

話は逸れますが、海外の映画や小説に接するとこう思うことがよくあります。
宗教という概念が我々日本人とは違っていて、さらに宗教による決定、選択が様々な場面でなされているような気がします(向こうの人にとっては、いちいち宗教的にはこうだからといったことではなく、生活に密着して意識することではないのでしょうが)。
分かりやすい例で言えば、一神教であることと多神教であることの違いだけでも相当に違います(当然ですが)。
宗教の話は半可通が首突っ込むにはデリケートな問題なのでこの辺にしときますが、キリスト教は以前から腰を据えて考えてみたいテーマでもあるので、参考になるような文献を知っている方がいたらぜひ教えてください。


以下ネタバレ感想(少しでも観る可能性がある方は読まない方がいいです)

















作品全体を通して無常観、そして人間という存在の小ささが描かれているように思います。
例えばこの作品では、映画のお約束を意図的に破っている場面がいくつもあります。
序盤に皆の制止を振り切って我が子を助けに出て行く女性は、普通であれば死んでしまうのがお約束ですが、最後は子供と共に助かっていて、悲痛な叫びをあげる主人公との対比として出てきます。
ずっと頼りになる冷静な役だった人物はあっさりと殺されてしまいますし、パニックの中苦しみながらも戦い続けた主人公には死よりも苦しいといえるような最期が待っています。
というか作中で悲惨に死んでいくのは、ほとんどが善良で何の罪もないように思える人々です。
そして混乱の中カルト宗教のようになってしまった連中は、明確には描かれていませんがおそらく皆生き残ったと思われます。
唯一扇動者であった女性は死が描かれていますが、それもモンスターにやられた仕方のない死ではなく、人間同士の醜い争いの結果です。

そうしたことからこの作品で言いたいことのひとつは、人間の選択なんてもっと大きな力の前ではちっぽけなことに過ぎない、ということではないでしょうか。
善人だから助かるとか悪人は裁かれるなんていうのは、所詮人間の小さい裁量で判断したときの話で、本当はもっと大きな存在があって、その存在の前ではそんな小さなことは意味がないし人間は無力なんだよ、と言われているような気がしました。
この大きな存在とはやはり神でしょう。

思うにこの作品では人間の傲慢さを咎めているのではないでしょうか。
キリスト教において罪である自殺(死を選択することも傲慢だった)を選択したことで、救いのない結末になることもそれを示していると思います。
そういった意味では、作中で異次元から飛び出したとされるモンスターは「神の怒り」の表れなんじゃないかと思います。

死刑、戦争、環境破壊など人間は自らの裁量において様々なことを判断して行っているが、それはちょっと傲慢なんじゃないの?ってのが作品の根底に流れるメッセージなんじゃないかと思いました。
またそういった小難しい話は抜きにしても、途切れることない緊迫感や映画のお約束を破る意外な展開など普通に楽しめる作品だと思います。

色々考えながら映画を観るの、けっこう楽しいです。
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